コンプレッサーの寿命|耐用年数の目安は?長持ちさせるメンテナンス方法
製造現場で稼働しているコンプレッサーの使用年数、メンテナンスや修理の頻度はどのくらいでしょうか。
コンプレッサーの入れ替えを考えている方、あるいは高額な修理費用に頭を悩ませている方は必見です。
この記事では、コンプレッサーの寿命や耐用年数、長持ちさせるための効果的な方法をご紹介します。
目次
コンプレッサーの寿命とは?
コンプレッサーに限らず設備には「使用可能期間(=寿命)」と「法定耐用年数」があり、「使用可能期間」は販売メーカーが機器性能を維持できる期間を意味し、一般的に寿命といわれます。
一方「法定耐用年数」は、税務上の減価償却費を計算するために定められた期間です。
ここでは、「使用可能期間(=寿命)」について説明します。
一般的な寿命は10年程度
コンプレッサーの寿命は一般的に10年程度といわれていますが、設置環境や使用状況によって変わります。
例えば、点検がされていない、高温多湿な場所に設置されている、長時間稼働しているなどの場合では寿命が短くなることがあるでしょう。
一方で、定期点検や予防保全をしっかりと行い、動作チェック・設定値の調整、軽微な症状でのエラー部分の解消などを適切に管理することで寿命を延ばすことができます。
運転時間・使用頻度が多いほど寿命は短くなる
コンプレッサの寿命は運転時間と使用頻度に影響されます。
運転時間と使用頻度が大きいとそれだけコンプレッサの総運転時間が多くなり、一般的には寿命は短くなる傾向です。
総運転時間が多い場合、摺動部の摩耗やオイルの劣化が早くなったり、フィルターが目詰まりしやすくなったりすることをイメージするとよいでしょう。
定期点検や予防保全などにより機械の負担を軽くすることが長寿命化へとつながります。
修理費の増加は寿命のサイン
修理費用は寿命に関係しています。運転開始間もないころの修繕費用は、一般的に吸込フィルターの清掃・交換やオイル補給など比較的安価なものが多いでしょう。
一方で長期間使用していくと、ベアリングやバルブ、エレメント、ファンベルトなど部材または制御基板やセンサ交換なども必要になってきます。これらは初期交換部品と比較して部材費が高価なことに加え、メーカー等専門業者でないと対応できないことが多いため、修繕費用が高くなる傾向があるでしょう。
コンプレッサーの耐用年数の目安
コンプレッサーの「法定耐用年数」は、用途によって変わります。各用途の「法定耐用年数」については財務省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で確認可能です。
ここでは2つの業種における法定耐用年数について説明しますので、検討の参考にしてください。
金属加工の場合<5~14年>
金属加工では、以下の3つに分類されます。
- 鉄鋼業用設備- 表面処理鋼材若しくは鉄粉製造業又は鉄スクラップ加工処理業用設備:5年
- 純鉄、原鉄、ベースメタル、フェロアロイ、鉄素形材又は鋳鉄管製造業用設備:9年
- その他の設備:14年
- 非鉄金属製造業用設備- 核燃料物質加工設備:11年
- その他の設備:7年 - 金属製品製造業用設備- 金属被覆及び彫刻業又は打はく及び金属製ネームプレート製造業用設備:6年
- その他の設備:10年
自動車製造の場合<12~15年>
自動車製造では、主に以下の3つに分類できます。
- 道路貨物運送業用設備:12年
- 運輸に附帯するサービス業用設備:10年
- 自動車整備業用設備:15年
このように同業種でも用途によって法定耐用年数は大きく変わるため、注意が必要です。
コンプレッサーの主な故障サイン
コンプレッサーには故障の前兆として、いろいろなサインがあります。すべて日常点検で発見することができるため、これから紹介するサインが確認された際は予防保全しましょう。
異音・振動
コンプレッサーから普段と違う異音や振動が発生した場合、それは故障のサインの可能性があるでしょう。例えば、以下の現象が挙げられます。
- 異音:ベアリングの破損など、内部部品の劣化
- 振動:圧縮機本体やモーターの不具合、防振ゴムの劣化
日常的に運転音や振動をチェックし、異常を感じたら迅速に対応することが重要です。
早期発見と適切な対策により、深刻な故障を防ぎ、コンプレッサーの長寿命化や生産影響の極小化に努めましょう。
圧力低下・エア漏れ
生産設備や工具の稼働状況に変化がないにもかかわらず圧力が上がらない場合、コンプレッサー本体に異常がある可能性があります。
圧力低下の原因として考えられるのは、吸込フィルターの目詰まり、モーター出力の低下、機械内部でのエアー漏れなどです。
これらの問題が発生すると、圧縮空気の供給が不安定になり、生産効率が低下する恐れがあります(生産設備によっては下限圧力を下回ると停止する可能性もあります)。異常を感じたら、早急に点検と修理を行うことが重要です。
オイルの消耗・漏れ
コンプレッサーの摺動部には潤滑油(オイル)が使用されます。オイルの消耗は一般的なことですが、消耗量が大きい、劣化が早いなどの場合はコンプレッサー異常の可能性があります。消耗量が大きい主な原因は、摺動部からのオイル漏れやエレメント劣化などです。
また、オイル劣化が早い場合は、高温多湿下での運転を避けるなど周囲環境により改善されることがあります。
フィルター目詰まりによる焼きつき・破損
吸込フィルターの目詰まりは圧力低下以外にも、焼き付きにつながる可能性があります。
フィルターが目詰まりした状態で長時間稼働を続けると、コンプレッサー内部が過熱し、最終的に焼き付きや破損につながります。
定期的なフィルターの掃除や汚れが酷い場合は買い替えなどの管理を行いましょう。
長持ちさせるためのポイント
これまでコンプレッサーの一般的な寿命や故障の前兆を示すサインについて説明してきました。
ここでは、このような視点を踏まえてコンプレッサーをより長持ちさせるためのポイントを4つに絞って説明します。
定期点検の実施
一つ目は定期点検についてです。毎日の日常点検(異音・異臭・漏れの有無などの外観点検)は必ず実施します。
それに加えてメーカーの推奨頻度で業者や専門の技術者による定期点検・予防保全(部品・パーツ交換)の実施により機能を維持していくことが重要です。
協和機工株式会社の「エア漏れ検査サービス」は、音の見える超音波カメラでエアーが漏れている箇所を視覚的に発見することができます。エアー以外のガス漏れも発見できるため、定期的に検査をすることで、コンプレッサーの寿命を延ばせるでしょう。
周囲環境の整備
二つ目は周囲環境です。コンプレッサーの周囲環境は寿命に大きく影響するため、以下のような環境が保てる場所への設置を心がけてください。
- 塵や埃が少ない場所
- 周囲温度が40℃以下、低湿度であり、換気がよくできる場所
- 腐食性、可燃性ガスのない場所
- 複数台設置する場合、メーカー推奨の離隔距離を取れる場所
- メンテナンススペースが確保できる場所
コンプレッサー本体の盤面を開放して運転している現場もありますが、粉塵が本体に混入するなど別のトラブルを引き起こす原因になるため、控えましょう。
運転時間と休止時間の適正化
三つ目は運転・休止時間です。24時間稼働の工場などでは常時エア供給が必要となるケースがあります。そのような工場で、コンプレッサーの台数や容量不足、負荷追従制御(台数制御やインバータ制御)がない場合では、一台当たりの運転時間が過度に大きくなってしまい、故障のリスクが避けられません。
複数台のコンプレッサーを負荷に合わせて稼働・停止することで長持ちさせることが期待できます。
設定圧力の適正化
最後は吐出圧力についてです。必要以上に圧力を上げた場合、コンプレッサーの稼働率が高くなり、寿命を縮めることにつながります。
工場内の配管系統をループにする、エアー使用設備の設置や作業エリアを変更する(駆動最低圧力が大きい設備は配管上流へ変更するなど)、レシーバタンク(急激な圧力変化を抑制する役割)を設置する、必要箇所に増圧弁を設置するなどして、吐出圧力低減に努めましょう。
なお、吐出圧力の低減は、長寿命化以外にも省エネ・省コストも期待できます。
まとめ
コンプレッサーの寿命や長持ちさせる方法について紹介しました。コンプレッサーの法定耐用年数は用途により異なってくるため個別判断が必要になります。
一般的な寿命は約10年と言われていますが、定期点検の実施や故障サインが確認されたときの適切な予防保全などの維持管理により長寿命化させることが可能です。
皆様が実際に使用している機種やシステムによっては、今回ご紹介したもの以外のチェックポイントもあるため、定期点検の際にメーカーなどに確認することをおすすめします。