水道料金のコストダウン方法は?検討すべきコスト軽減対策まとめ
製造工場などで従業員が油の付いた腕を石鹸で洗っている間に水道を出しっ放しになっている光景を見ると、どのように感じるでしょうか。
経営者としては電気などと同様にもったいないと感じることでしょう。
そこで本記事では、水道料金のコストダウン方法としての設備や意識改革、工業用水の料金の仕組み、水の再利用によるコスト削減や社会貢献について解説します。
目次
水道料金のコストダウン方法は?
企業における水道光熱費のコストダウンは永遠の課題です。一番の対策は水や電気などの節約と料金を抑えることに他ならないでしょう。
しかし、水道においては近年の環境問題とともに技術の発展もあり、再利用する選択肢があります。再利用する設備と、有効活用の意識は経費削減プランとしてとても重要です。
省エネ・節水型設備の採用
手洗い場などでの節水に簡単に導入できるものに節水コマがあります。節水コマは蛇口内のコマを節水用に交換するだけで水の勢いを減らし、使用する水の量を抑えることが可能です。
また、赤外線センサーを取り付けた自動水栓は水が必要な時にだけ出るため、無駄な垂れ流しを防止できます。
いずれも石鹼での手洗い時などの無駄な出水をカットすることが可能です。
ろ過水の使用
工業用水や地下水はろ過装置を使うことで水道水並みの水質に変えることができます。
水道水より単価の安い工業用水や無料で手に入る地下水は、そのままでは雑菌が入っていることから飲料用には向いていません。
しかし、ろ過装置を使って不純物をろ過すれば、水の濁りや滅菌用に使用した塩素などを計測・管理して水質を向上させることができるため、安定してきれいな水の供給が可能です。
ろ過装置は除鉄除マンガン装置・活性炭ろ過装置・膜ろ過装置などの大掛かりな設備になりますが、工業用水や地下水を浄水することで水道水の使用量を減らせます。
自家水道システムの導入
自家水道システムとは余剰工業用水や地下水をろ過装置によって浄水し、水質を向上させたり生活水源を確保したりすることで水道料金の削減を実現するシステムです。
工業用水は体内への摂取はできませんし、人体に触れる可能性のある箇所への使用もできません。ろ過装置でのろ過や塩素による浄水処理をしていないためです。
自家水道システムは、ろ過装置の施設設置費用の申請や専用水道申請が必要となります。
ただし、飲料用の上水道より比較的低価格で基本料金も低い工業用水の余剰分を上水道として利用できるのは大きなメリットでしょう。
工業用水は契約時に想定使用水量より多めに設定して契約するため、余剰水は発生しやすい傾向にあります。
会社の使用する水の量にもよりますが、年間の水道料金を30%以上削減に成功した事例もあります。
下水道料金の減免申請
下水道料金は下水道減免制度により料金を減免申請をすることができます。
下水道は排水量を計測して料金が決まるわけではありません。生活用水や工業用水などの上水道を使用した分だけ排水するとの考えから、使用した水量分から自動的に下水道分の料金が計算されます。
しかし実際には製品内に使用されたり、側溝などに流れたり、蒸発したりする量も含めると下水道へ流れる量は使用量より少ないのが実情です。
予測よりも下水道へ排出される量が少ないケースでは、下水道減免制度を申請することができます。
下水道に排水されない水量が使用水量の10%〜30%と、認定条件は行政区域によって幅があるため、管轄区域の水道局への確認が必要です。
従業員の意識改革
工場内にろ過装置を設置して工業用水を浄水して有効活用しても、無駄に垂れ流しをしていては意味がありません。腕の油汚れを石鹸で洗い落とすときに、蛇口から水が出たままの光景を見ることがあるでしょう。
すべての従業員が意識するまでには期間を要するかもしれません。しかし、「水道代を減らす」というプロジェクトを始めたり、節水に関する教育の時間を設けたりすることが大切です。
具体的には蛇口に簡易的な水道使用量の見える機器などを設置して、節水の意識を促すことが有効でしょう。
また、ISO14001などの環境に関する活動を実施している事業であれば、「無駄な排水を減らす」「資源を大切にする」という観点から意識改革をすると効果的です。
水漏れや故障のチェック
生産設備に水を使用している場合は、定期的な水漏れや水栓の点検が必要です。
設備が古くなると蛇口内のパッキンも硬化して、水がきちんと止まり切れていないことがあります。特に排水管からホースなどで機械に接続している場合は、漏れが多くなりやすいでしょう。
水漏れが確認できない会社や工場の長期休暇などの場合は相当な量の水を廃棄していることになります。そのため、毎日の始業前や終業時、週末の終業時などは必ず点検を行いましょう。
点検方法は以下のとおりです。
- 大元の水元栓は開けたまま、その他の蛇口を全て閉める
- 水道メーターのパイロットマークが回転していれば水が漏れている
- 漏水箇所を探す
また生産機械の裏側のゴムホースが硬化して割れた場合は、飛び出した水が製品にかかったり、電気系統にかかったりすることで不良や事故の原因にもなります。
漏水は危険であり、経済的損失を被ることにもなるので注意が必要です。上記の対応策はガス漏れに対しても適用できるでしょう。
工業用水料金の仕組みとは
工業用水の料金制度には責任水量制と二部料金制があります。
責任水量制は1か月間に実際に使う水量よりも多めの水量で契約しているため、企業が節水をしても料金削減には結びつきません。
現状では二部料金制を選択する企業も増えてきており、自社に有利な制度を選ぶことが大切でしょう。
二部料金制
二部料金制とは基本料金と実際に使用した水量から構成される料金制度です。二部料金制度では契約時に必要最低水量を基本使用水量として契約します。
1日あるいは一定時間内に基本使用水量を超えないように節水をすれば水道料金を抑えることが可能です。
ただし、1日あるいは一定時間内の基本使用水量を超過して使用した分の料金は、通常の使用料金よりも大幅に割高になるデメリットがあります。
また、水道局によっては責任水量制からの切り替えに関する契約条件・料金単価などに差があるため、管轄する水道局へ確認する必要があるでしょう。
料金の算出例
二部料金制の料金の算出例を紹介します。基本的な計算式は、(基本料金+使用料金+超過料金)+メーター使用料の合計金額です。
各管轄水道局によって単価の違いはありますが、ある都市を参考に算出してみましょう。
- 基本料金単価:31.3円/1立方メートル
- 使用料金単価: 8.8円/1立方メートル
- 超過料金単価:80.2円/1立方メートル (基本料金+使用料金の2倍)
- メーター使用量:500円~7,000円 (元栓の口径による)
1日あるいは一定時間内の使用水量の超過を生産計画などで調整、または節水できれば料金削減につながります。
工場における水道料金削減の重要性
水道料金が削減できた実績は企業の利益だけでなく、環境問題への取り組みの成功や万一の災害時での社会的貢献にもつながるでしょう。
利益の増加
水道代削減によって売上をあげることはできませんが、利益を上げることは可能です。水道料金を削減できた分が利益の増加となります。
では、どのようにして水道料金を下げることができるでしょうか。
- 料金体系の見直し
- ろ過装置を使って、責任水量制での余剰水を上水道として使用する
- 地下水が確保できる場合もろ過装置を使って上水道として使用する
- ②③での上水道を利用することで本来の上水道の使用料金を削減する
企業規模や設備の状況にもよりますが、上水道料金を年間30万円〜300万円削減することに成功し、利益が増加した事例もあります。
環境負荷の削減
工業用水として使用した排水をろ過装置を使って上水道レベルまで浄水ができなくても、工業用水として使用できるレベルまで再生することは可能です。
生産設備で使用されて排水される水の中には、冷却用や洗浄用も少なくありません。用途によってはわずかに汚れた程度や中程度の汚水もあるでしょう。
すべてを上水道水に変えることができなくても、生産設備への再投入など他の用途で再利用することができれば、水の節約や汚水の削減になり、環境への負荷削減が可能です。
企業の社会的責任
自社で工業用水や地下水をろ過して上水道として浄水や貯蔵ができれば、BCP対策としても非常に有効でしょう。
上水道の使用や下水道への排水を減らす環境問題への取り組みは企業に必要です。同時に企業の持つ設備を共同で使えば、災害時に避難所や近隣住民への飲料水の提供が可能になります。
水質汚濁防止法により有害物質の許容限度も設定されているため、これらをクリアできるろ過装置や貯蔵設備を整える必要はありますが、社会的貢献度も大きく評価されることになります。
参考:水質汚濁防止法
まとめ
企業での水道料金の削減には従業員の意識とともに設備の改善によっても大きな効果が出ます。
特にろ過設備を使った自家水道システムは、余剰に買った工業用水や地下水を飲料水レベルまで浄水することが可能です。自家水道システム導入は自社の上水道のコストダウンに大きな期待ができます。
また環境負荷の削減やBCP対策として社会貢献にも効果的です。
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