ピークシフトとピークカットの違いとは?省エネ効果を最大化する方法
「電気料金をどうにかうまく抑えたい」と考える企業は多いでしょう。
1日の中でも時間ごとに電力消費量は波があります。電力消費量の波の高低差を減らすことを実現するのが、ピークカットとピークシフトです。
ではどの機械で、どの時間帯に、どれだけの電力を消費しているかを把握できているでしょうか。
機械や時間によってどのように電力をうまく使うのかを知ることで、ピークカットとピークシフトによる省エネ効果を最大化する知識が身に付きます。
目次
ピークカットとピークシフトの違い
工場などで電気使用料金を低減させたい時に、ピークカットとピークシフトという言葉をよく耳にします。どちらも電力や電気代の削減の方法や取り組みに関連する言葉です。
ここでは、ピークカットとピークシフトの違いについて解説します。
ピークカットとは
工場などの生産設備では日中の機械稼働ピーク時に多くの電気を使用します。
ピークカットとは電気を多く使用する時間帯に自家太陽光発電などの電力を使用することで、電力会社から購入している電気量を低減させることです。
ピークカットは1日の最大デマンドを下げて、瞬間の電気使用量を低い位置で平均化することで電気の基本料金を下げることができます。
電気料金の基本料金は契約電力によって決まりますが、契約電力は最大デマンドで決まるのが特徴です。
最大デマンドとは30分毎に使われる電力消費のことを指します。この最大需要電力で1年間の電気料金の基本料金が決まります。
ピークカットの方法としては太陽光発電や蓄電池の電力使用のほか、不必要な照明の間引きや空調の調整などが挙げられるでしょう。
ピークシフトとは
ピークカットと同時によく使われる言葉にピークシフトがあります。ピークシフトとは電力ピーク時の電力使用量を、夜間などに使用した電気として置き換えることです。
夜間や休日など休業時間中の使用電力が少ない時に、日中の使用電力を上回らない程度に蓄電池へ充電して、翌日のピークカット時に使用する電力として活用します。
つまり、1日の最大需要電力を下げるため、夜間や休日などの最大需要電力量までまだ余裕があるうちに先に電気を買って溜めておき、ピークカットの時に使う電力として確保しておくことです。
ピークシフトをすることで最大デマンドが低減された状態で平準化されます。ピークシフトによって最大デマンドが低く平準化されることは、電気代の基本料金の低減に効果的です。
違いは全体の電力使用量
ピークカットやピークシフトの対策を取った場合の大きな違いは全体の電気使用量に出てきます。全体的に使用した電気量は同じであっても、ピーク時にどれだけの電力を消費したのかが問題です。
特に対策を取らなかった場合は、ピーク時の最大デマンドが300kwで、深夜の最小デマンドが20kwだった場合、300kwが基本料金の基準値となります。
一方でピークカットでピーク時の最大デマンドを230kwまで下げる代わりに、ピークシフトで最小デマンドを100kwまで上げた場合、最大デマンドは70kwです。
1日の電気使用量の最大と最小の差を少なくすることで、同じ電力消費でも支払う電気料金に差が出ます。
ピークカットやピークシフトで電気代が削減できる理由
電気代を削減するには使用電力を下げるのが一番効果がありそうですが、それでは製品の生産も下がってしまいます。
現状の使用電力量で電気代を下げる方法の検討が必要です。消費電力の多い時に自家発電した電力を使い、夜間の電力使用の少ない時間帯に蓄電することが実現できれば電気代を削減できます。
電気料金の決まり方
電気料金は一般的に下記の計算式で算出されます。
- 電気料金 = 電力量料金 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金 + 基本料金
電力量料金は使用した電力量のことです。電力使用量に応じて料金も変動します。
- 電力量料金 = 電力量料金単価(税込) ✕ 使用電力量 + 燃料費等調整額
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、自然界に存在するエネルギーによって発電した電力を電力会社が買い取る際に発生する費用の一部を電気の使用者が負担するものです。
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金 = 促進賦課金単価(円/kWh) ✕ 1ヶ月の使用電力量(kWh)
基本料金は以下の計算式で算出されます。
- 基本料金 = 基本料金単価 ✕ 契約容量(契約電力)
ここで出てくる「契約容量(契約電力)」は最大デマンドによって決まります。
最大デマンドを下げて基本料金を抑える
基本料金の計算式に「契約容量(契約電力)」があります。契約電力に大きく影響し「最大デマンド(最大需要電力)」を下げる効果があるのが、ピークカット・ピークシフトです。
例えば、ピーク時の最大デマンドが300kwの場合、300kwが基本料金の契約電力になります。
もしピークカットを導入していた場合に、最大デマンドが230kwであれば、230kwが契約電力になり、1年間これを超えない限りは基本料金が増えることはありません。
逆に途中の月で230kwを超えて270kwになったら、その月から1年間は270kwがベースになり基本料金が決定されます。
ピークカット・ピークシフトの導入で1日の最大デマンドの抑制を1年間継続できれば、基本料金のコスト削減が可能です。
ピークカットは電気量料金も削減できる
ピークカットを導入すれば基本料金のコスト削減だけでなく電気量料金も削減することができます。なぜなら、ピークカットを実現するための対策として、自家太陽光発電を活用すれば、自家発電した分の電気使用量の支払いがなくなるからです。
企業や工場の立地条件にもよりますが、太陽光発電以外にも地熱発電や風力発電なども検討することができるでしょう。
自家発電設備が整えば、電力需要に問題がなく電気量料金と基本料金がますます削減されて大きなコストダウンにつながります。
発電設備の導入には設置費用やメンテナンス費用も考慮しなければなりませんが、従来の電気量料金を削減できるでしょう。
また企業としての省エネ、CO2削減などの環境活動への取り組みによって、企業イメージが向上するメリットもあります。
企業がピークカット・ピークシフトを導入するには?
企業が節電や電気料金の抑制を実現するには、ピークカットやピークシフトの導入が効果的です。
主に設備の設置と企業全体の消費電力への取り組みが重要になるでしょう。
特に電気をいかに使い過ぎているのか、もっとうまく使う方法はないのかといった点を検討し意識しなければなりません。
電力使用状況の見える化
企業での電気料金のコストダウンを図るにあたって、設備投資と同じくらいに重要になるのが、従業員の省エネやコスト意識です。
水道のように目に見えるのであれば意識しやすいものの、電気の場合は機械や設備の稼働に対してどれだけの電力を使っているのかは把握するのが容易ではありません。
もちろん工場の電気メーターを見に行けば分かりますが、機械設備ごとの電力や機械の稼働の工程ごとの電力などは把握しにくいでしょう。
しかし、いつどこでどのくらいの電力が消費されているのかを知らなければ、ピークカットの取り組みが実現できません。
そこで効果的なものが、機械設備ごとの瞬間の使用電力量の「見える化」です。見える化は機械担当者や部門長などがすぐに、かつ分かりやすく判断できるシステムである必要があります。
また電力の使用量を記録することで、機械の状態の変化にも早く気付き、メンテナンスの時期の判断や製品への影響を含めた品質問題にも効果があるでしょう。
太陽光発電設備の設置
ピークカットの実現に有効な対策として太陽光発電があります。太陽光発電は太陽からの光エネルギーを電気に変換するシステムです。
メリットとしては発電した電力を自社の電力として無料で使えることが挙げられます。他にも災害や停電時の非常用電力になり、発電時にもCO2を排出しないので、ISOなどの環境対策としても有効です。
デメリットとしては設置場所の確保や初期費用・メンテナンス費用などが挙げられるでしょう。
また、太陽光パネルを工場の屋根に設置することで工場内の室温上昇を抑えたり、トラックの搬入口のテント代わりに使い、場所や機能をうまく活かしたりしている企業もあります。
他に風力や地熱発電などがありますが、立地条件の問題が重要です。対して太陽光発電設備はほとんどの工場などに設置することができます。
蓄電池の設置
ピークシフトを導入する場合に必要になる主な設備として蓄電池があります。夜間の電気使用量の少ない間に電気を溜めておく必要があるからです。
蓄電池は大きなバッテリーを想像すると分かりやすいでしょう。蓄電池の設置において重要なことは火災リスクがあることで、火災の原因を見ても約20%が電気が関係しています。
2023年に総務省消防庁において改正・公布された消防法令により、蓄電池の設置には各市町村が定める火災予防条例が適用されることになりました。
蓄電池容量が10kWh以下の場合は法令への適合は対象外ですが、10kWh以上は法令への適合が必要になります。また20KWh以上は消防機関への届け出も必要です。
蓄電池の設置費用は蓄電池の種類(リチウムイオンやニッケル水素など)と電気容量によって変わります。また産業用で蓄電池を設置する場合、工事費用は家庭用の1.5倍以上掛かるのが一般的です。
業者によって太陽光発電設備とセットで設置することでお得になる場合もあるので、一度相談してみましょう。
参考:消防法令
まとめ
電気料金を低減させるには、ピークカットで昼間の機械稼働ピーク時の最大デマンド(最大需要電力)を引き下げることが必要です。そしてピーク時に不足する電力を夜間など消費電力の少ない間に蓄電池に溜めておいて使います。
最大デマンドが下がれば電気料金の基本料金を下げることができ、コストダウンにも省エネ・環境問題にも効果的です。そのためには常時、電力消費量を見られる環境を整えることを検討しましょう。
協和機工株式会社では、超音波センサーカメラを使用した、コンプレッサーのエア漏れ検査を実施しています。工場稼働中でも簡単に検査ができるため、多くのお客様に好評をいただいています。詳しくは「エア漏れ見える化.com」をご覧ください。