工場照明の省エネ化とは?導入メリットを詳しく解説します!
LED照明は高効率のため、電力消費を抑えられ、電気代を削減できる効果があります。また、LED更新は電気代削減以外のメリットも少なくありません。
この記事では導入による省エネ効果の概要や実際の削減効果などについてご紹介します。
工場・倉庫のLED照明の導入による省エネ対策
まずはLED照明を導入するメリットや導入後の省エネ対策についてです。
長寿命や低消費電力である以外にも、照度の調節やセンサ機能と組み合わせることによる節電効果についても解説します。
寿命が圧倒的に長い
LED照明の最大の特徴は寿命の長さです。一般的な照明の定格寿命は、白熱電球で1,000〜2,000時間、蛍光灯で6,000〜1万2,000時間ですが、LED照明は約4万時間と圧倒的な長寿命を誇ります。
さらに、LED照明の寿命は「点灯しなくなるまでの時間」と「全光束が定格値の70%まで低下するまでの時間」の短い方と定義されているため、寿命を迎えてもすぐに点灯しなくなるわけではありません。
この長寿命性は、交換頻度の低減やメンテナンスコストの削減につながります。
必要な明るさに照度を調節できる
LED照明のなかには調光機能があり、状況に応じて明るさを調整できる種類があります。
例えば、読書や作業時は明るくしたり、夜間は暗めに設定したり、オフィスの窓際は昼間の自然光に合わせて明るさを抑えたりすることが可能です。この調光機能は単に快適性を高めるだけでなく、省エネにも貢献します。
明るさを抑えることで消費電力が減少し、電気料金の節約につながるでしょう。さらに、LED照明への負担が軽減されるため、寿命を延ばす効果も期待できます。
センサ機能を活用して点灯時間を短縮できる
LED照明はセンサ機能と組み合わせることで、不要な点灯を減らし、より省エネ効果を高めることができます。
明るさセンサは周囲の明るさに応じて自動で点灯・消灯することが特徴です。室内照明では昼間は明るさを抑えたり、夕方に明るくしたり、夜間に玄関照明を自動点灯したりすることができます。
人感センサは人の動きを検知して自動的に点灯・消灯が可能です。トイレや階段など、人が常時いない場所で特に有効で、消し忘れを防ぎます。これらのセンサ機能を活用することで、エネルギー効率が向上し、電気代の削減にもつながるでしょう。
交換コストが削減できる
LEDの長寿命性は、交換に関わる以下のようなコストも削減できます。
- 交換作業にかかる人件費
- 高所作業するための仮設足場設置などの特別費用
- 交換作業中、作業中断による生産停止のコスト
- 廃棄照明の処理費用
LED照明は従来の蛍光灯などと比較して初期投資が高くなりがちです。しかし、長期的な視点で見ると大きなコスト削減につながります。
光熱費の削減効果に加え、上記の交換の手間やコストの低減が実現するため、総合的に見て経済的なメリットは大きくなるでしょう。
室内の温度に影響がない
LEDは電気エネルギーを直接光に変換するため、従来の蛍光灯や白熱電球と比べて発熱量が大幅に少ないのが特徴です。特に点灯中の白熱電球は触れないほど熱くなることはよく知られています。
この低発熱特性は、照明自体の省エネ効果だけでなく、空調負荷の低減にもつながるでしょう。照明からの熱放出が少ないため、室内の温度上昇が抑えられ、特に夏季の冷房負荷を軽減することができます。
結果として、エアコンの使用電力量も削減でき、照明と空調の両面で省エネ効果を得ることが可能です。これは、特に大規模な商業施設やオフィスビルなどで顕著であり、施設全体の電力消費の削減につながります。
点灯までの時間が速く虫がよりにくい
LED照明は、従来の蛍光灯や白熱灯と異なり、スイッチを入れると瞬時に点灯する特徴があります。
特に水銀灯と比較すると、その差は顕著です。水銀灯は点灯まで数分かかり、停電後の再点灯にも時間を要しますが、LEDは瞬時に点灯させることができます。
さらに、LEDは紫外線をほとんど発しないため、虫を寄せ付けにくいことも大きな利点です。これは屋外照明において特に重要で、建物内への虫の侵入を減らすことができます。
SDGsや脱炭素経営の促進ができる
LED照明は、環境面においても優れています。まず、消費電力が大幅に少ないため、CO2排出量の削減に直接貢献が可能です。また、長寿命であることから廃棄物の量も減少させます。
さらに、水銀などの有害物質を含まないLED照明は、環境負荷を大きく軽減するでしょう。これらの特性は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与しています。
特に、目標12「つくる責任 つかう責任」と目標13「気候変動に具体的な対策を」の実現に向けて重要な役割を果たすでしょう。
工場・倉庫でLED照明すると省エネ効果はどのくらい?
LEDに更新すると実際の省エネ効果はどれくらいになるのでしょうか。
ここでは、国の補助事業を活用してLED更新した事例や、東京都が公表している業種別のLED更新した際の省エネ効果や投資回収年数についてご紹介します。
実際の電気代削減はどのくらい?
LED照明への更新による電気代削減効果は、機器や用途、点灯時間などの使用条件により異なりますが、経済産業省が公表している事例が参考になるでしょう。
経済産業省 補助事業「平成31年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業」で照明をLEDへリニューアルした(株)セイコーレジンでは、LED高天井器具58台、LEDダウンライト6台、LED照明器具229台を更新し、年間550万円の削減と73%の省エネ率を達成したとの報告がなされています。
この事例から、LED照明への更新は大きな省エネ効果と電気代削減をもたらすことがわかるでしょう。
初期費用の回収年数
LED照明への更新による投資回収年数も、点灯時間などにより変動しますが、「東京都地球温暖化防止活動推進センター」では、業種別の投資回収年数が公開されていますので、こちらを参考にしてみましょう。
工場では17.6年(FLR40W×2灯×90台)、倉庫では11.3年(FLR40W×2灯、FLR110W×2灯など261台)、ホテルでは6.3年(FHF32W×2灯他320台)となっています。
点灯時間が長いほど投資回収年数は短くなる傾向が顕著です。工場や倉庫と比べてホテルなど点灯時間や点灯日数の多い施設では回収が早くなります。
電力使用状況の見える化も重要
LEDへの設備更新に加え、電力使用状況の見える化も導入することで、より省エネ効果を高めることができます。
- 無駄な点灯の発見と削減:不必要なエリアでの点灯を特定し、削減できる
- 省エネ効果の定量化による従業員の意識向上:更新や運用改善の効果を数値で示すことで、従業員の省エネ意識が高まる
- 運用改善点の発見:データ分析により、新たな省エネ施策を見出せる
これらの取り組みにより、LED更新だけでなく、継続的な省エネ活動が可能となり、長期的な電力消費の最適化と環境負荷の低減が実現できるでしょう。
工場・倉庫でLED照明が普及している背景
工場や倉庫でのLED照明普及には主に3つの背景があります。それは、「政府の導入支援」「法規制の強化」「世の中の関心」です。
ここではこれら3つの観点から、その理由を説明します。
政府による支援
LED導入には経済産業省の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の補助金が活用可能です。「省エネルギー投資促進支援事業(設備単位型)」では、制御機能付LEDを導入する場合、電気工事のうち設備費の3分の1が補助されます。
2024年度は2回の公募があり、一次公募の採択率は51.3%、二次公募は60.8%と、いずれも50%超です。LED更新をお考えの方は、公募要領を確認し、この補助金を活用してみてはいかがでしょうか。
水俣条約などの法規制
水俣条約とは、水銀鉱山からの産出、水銀の輸出入、水銀添加製品(蛍光灯など)の製造・流通、水銀使用製造工程を包括的に規制する国際条約です。
参考:照明に関する水俣条約への 正しい理解について|日本照明工業会
この規制により、水銀を含む従来の照明器具の製造が順次禁止され、入手がどんどん困難になってきます。
そのため、工場や倉庫では計画的なLED照明への更新が不可欠です。この条約は環境保護と人々の健康、そして持続可能な照明技術への移行を促進しています。
照明設備の省エネに対する関心
LED照明は、省エネ・省コスト効果に加え、長寿命性というメリットがある点について説明しました。さらに、国からの補助金や法規制の強化により、照明設備の省エネ対策への関心が高まっています。
政府が掲げた2050年カーボンニュートラル目標に向けて、今後ますます省エネ・脱炭素経営に注目が集まるでしょう。このような背景から、省エネ性に優れるLED照明の普及はさらに加速すると考えられます。
企業や組織が環境責任を果たし、持続可能な脱炭素経営を実現するためには、LED照明の導入は必要不可欠な施策の一つになるでしょう。
工場の照明に関するよくある質問
最後に工場の照明に関してよく耳にする質問をご紹介します。
工場のLED照明の寿命はどのくらいですか?
LED照明の寿命は約4万時間とされ、1日12時間、年間250日使用の場合、約13年間使用できる計算になります。
しかし、以下のような環境では寿命が短くなる可能性があるでしょう。
- 換気が悪く、熱がこもりやすい、高温になりやすい場所
- 天井付近など太陽からの輻射熱を受けやすい場所
- 塗装や薬品を扱う場所
- 蒸気の出る生産設備付近
これらの環境で使用する際は、適切な保護等級(IP規格)のLED照明を選択することが重要です。
工場の照明の明るさはどのくらいですか?
工場照明の推奨照度は「JIS Z9110照明基準総則」により以下のように定められています。
- 精密機械、電子部品の製造など:1500lx
- 繊維工場での選別、検査など:750lx
- 一般製造工場など:500lx
- 作業を行う倉庫、便所、洗面所など:200lx
照明器具の更新時には、現状の照度と上記の推奨照度を考慮し、メーカーなどの専門家に相談して決定することが重要です。これにより、作業内容や環境に最適な照度の空間を実現できます。
適切な照度は作業効率や安全性の向上につながり、従業員の快適性も高められるでしょう。
まとめ
工場照明をLED化することのメリットについて解説しました。LEDは長寿命、低消費電力であること以外にも、交換コストの削減や空調負荷の低減など様々なメリットがあります。
LED更新をしていない場合は、気軽に交換できるタイプ(ランプ交換で対応可、仮設足場が不要など)で点灯時間の長い場所から優先的に更新するのがよいでしょう。
協和機工株式会社では、コンプレッサーのエア漏れ箇所を超音波カメラで可視化し、エア漏れ箇所や損失金額とあわせてレポートにしてお渡しする「エア漏れ検査サービス」を実施しています。工場の省エネに役立つと、多くのお客様に好評をいただいています。詳しくは「エア漏れ見える化.com」をご覧ください。