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熱交換器のリチュービングとは?メンテナンスの手順から特殊工具まで詳しく解説します!

2024.10.29

熱交換器のリチュービングとは?

熱交換器のメンテナンスに頭を悩ませてはいないでしょうか。熱交換器を長時間使用していると劣化が進み、チューブに穴が空いて使用不能の懸念が高まります。

適切な処置をしないと作業効率も悪くなってしまい、生産性も低下するでしょう。

そこで、熱交換器のリチュービングからメンテナンス手順、特殊工具にいたるまで解説していきます。

多管式熱交換器のメンテナンスメニュー

多管式熱交換器はメンテナンス作業をすることで、作業性が高まり効率よい生産体制の構築が可能です。

以下では「リチュービング」「オーバーホール」「突発的トラブル対応」について見ていきます。

リチュービング

リチュービングとはチューブを新しく入れ替える作業です。稼働を続けていると、チューブの摩耗や破損、腐食といった劣化が進み、そのまま放置していると生産状況も低下していきます。

古いチューブを新しく入れ替えることで従来の作業効率を取り戻すことができるため、劣化したチューブはリチュービングが必要です。

一般的にプラグを打ち込む作業では溶接が必要となりますが、メカニカルプラグ工法を使用すると溶接も必要としないのでメンテナンス作業の効率も上がります。

オーバーホール

設備の停止後に熱交換器を分解して、内部を詳細に点検していきます。

オーバーホールではチューブバンドルを引き抜いて洗浄を行いますが、腐食や劣化の度合によっては修理・部品の交換が必要です。

各作業が終わればチューブバンドルを挿入して連結を行い、圧力テストやリークテストを実施して確認をします。

熱交換器の性能を元の状態に回復させる作業のため、定期的なオーバーホールの実施は生産性を高めて装置の寿命を延ばすことにつながるでしょう。

突発トラブル対応

圧力の急激な上昇や腐食によるチューブやプレートの破損、熱交換器の急な閉塞による装置の損傷などで、プロセス全体への影響が懸念される場合は、突発的なトラブルへの対応が必要です。

多管式の場合はチューブ1本が閉塞しても、メカニカルプラグでチューブ閉塞法を用いれば、他の管によって熱交換器は稼働が可能となります。

突発的なトラブルでは、設備を停止して漏れた流体の回収作業を行わなければならないケースもあるため、普段から定期的なメンテナンスを心がけるようにしましょう。

熱交換器の種類

熱交換器には構造がシンプルな「多管式熱交換器」と流体間の熱交換が効率的な「プレート式熱交換器」があります。

どちらもメリットがあるため、それぞれの違いを見ていきましょう。

多管式熱交換器

多管式熱交換器は、チューブとシェルを通じて2つの流体の熱が伝導されていきます。

構造がシンプルながら高圧や高温といった条件にも強く、メンテナンスもしやすいので広く活用される熱交換器です。

チューブ内とシェル内に流れる流体が接触する面積が広くなって熱が伝達されます。多管式熱交換器には両方が同じ方向に流れる「平行流」と、逆向きの流れになる「逆流」があり、後者のほうが熱伝達の効果が高いのが特徴です。

プレート式熱交換器

プレート式熱交換器は、薄い金属性のプレートを積み重ねて、効率的に熱を移動させるために設計された熱交換器の一種です。

プレート式熱交換器では、液体の流れが平行流や逆流以外にも、波型や溝のあるプレートを用いて液体の流れを交差させる乱流にして熱伝達力を向上することができます。

多管式熱交換器よりも効率的な熱交換が可能ですが、高圧や高温といった条件には制限があり、多管式熱交換器よりもコスト面で高いのがデメリットです。

熱交換器のリチュービングとは

熱交換器のメンテナンス作業に欠かせないのがリチュービングです。熱交換器のチューブ内の目詰まりを定期的に除去することで効率的な熱伝達を実現できます。

リチュービングとはどのようなものかを、メンテナンスに用いる特殊工具も併せて紹介します。

リチュービングとは

リチュービングとは古いチューブを新しいものに入れ替える作業です。熱交換器を長期間稼働させると、チューブ内は摩耗やスケール、腐食などで劣化します。

劣化が進んだ古いチューブをそのまま使用すると熱伝達が悪くなってしまい、突発的なトラブルにもつながりかねません。

定期的なメンテナンスまでに耐久力が持続しないチューブは、リチュービングが必要です。

リチュービングは専門知識が必要なため、専門スキルを有している専門業者に依頼するようにしてください。

リチュービングで活用する特殊工具

熱交換器のリチュービングに使用する特殊工具を紹介します。

Mini Drill GFF

2つの独立したアームによる反力を利用し、ねじ山の修正を容易に行うツールです。ネジ山だけでなく、穴あけやインチアップにも活用でき、800mmの可動域は多くのプラント設備にも使用できます。

熱交換器用 Mini Cut 100

熱交換器のチューブ切断に使用する工具です。減速機能も付いており、最大で3.4mmの厚肉があるチューブに対して、迅速な作業を実現します。合金や鉄など、あらゆる材料のチューブにも使用可能です。

自動連続チューブプーラー

高速のポンプとプーラーから構成される自動チューブプーラーシステムです。熱交換器だけでなく、ボイラーやコンデンサーなどのチューブを自動的に連続稼働で引き抜けます。ポンプは電気式か空気式の選択が可能です。

熱交換器チューブ専用インナーカッター

ステンレス材などの硬度の高い素材でも内側から切断できるため、作業効率が高まり、作業者も安全に使用できる多数のメリットを有するカッターとなっています。
熱交換器のチューブを内側から切断できるツールとしては、日本初上陸です。

熱交換器のメンテナンスサービスの手順

熱交換器は経年劣化するため、稼働している設備はメンテナンスが必要ですが、稼働していない設備であっても定期的な清掃や点検が大事です。

チューブリークテストやメカニカルプラグで打設するメンテナンス作業を見ていきましょう。

チューブリークテスト

リークテストは熱交換器や圧力容器などで流体の漏れを確認するためのテストです。

2人作業でテスターをチューブの両側に差し込んだ後、片方のテスターにエアーを供給し、圧力を保持できているか確認します。

テスターの背面に圧力計が付いており、リークがなければ針は動かず圧力は保持できている状態です。

一方で、チューブに穴が空いていれば、圧力が保持できない状態を目視ですぐに確認できます。チューブ1本あたりでわずか数秒のテストとなり、作業効率も高く早期にリークを発見するのに効果的です。

リークは事故や性能低下につながるため、リークテストは非常に重要な役割を担っています。

メカニカルプラグでチューブ内に打設

メカニカルプラグでのチューブ内への打設は、作業工数の削減につながると同時に安全な作業が可能になるため、以下で詳細な内容を紹介します。

プラグ打設前の準備

米国カーティスライト社製のメカニカルプラグ【Pop-A-Plug】を使って一般的なブラシと仕上がり具合を比較していきます。

まずはGo/No Goゲージ(チューブ測定ゲージ)を用意して、細い方は熱交換器のチューブの穴に差し込みますが、太い方が差し込めなければサイズは問題ありません。

次にチューブの中をブラシで磨きますが、一般的なブラシを使用すると、ブラシが奥まで入りきらずにブラッシング時の振動によってドリルが持っていかれそうになります。

一方でメカニカルプラグ専用のブラシを使うと、チューブ内にブラシがすっぽりはまり、ドリルの振動が抑えられて真っ直ぐブラッシングが可能です。

出来上がりを見ると、一般的なブラシは磨く前と比較しても変化が見られず、専用ブラシでは明らかに綺麗な仕上がりになっています。

プラグの打設作業

プラグの打設作業では、まずガンにメカニカルプラグを装着していきます。ガンは矢印に沿って組み立てますが、メカニカルプラグには安全装置も付いているので忘れずに装着しましょう。

専用ブラシでチューブ内を綺麗に磨き、メカニカルプラグを打ち込みます。必ずチューブ内の清掃作業を先に済ませておきましょう。

ガンを両手でしっかり握り真っ直ぐに打ち込みますが、すぐに閉塞可能です。

メカニカルプラグを使えば溶接不要で、最大40Mpaまで対応でき、最後はガンとプラグをつないでいたピンを回して作業完了となります。

従来の工数を大幅に削減しており、速いだけでなく、作業者の安全面でも改善が見込める工法です。

プラグの抜き取り

メカニカルプラグはテーパーになっており、またリークしないよう閉塞されているため、そのまま引き抜くのは難しいでしょう。

まずはメカニカルプラグの専用工具を用意してノックピンの先端に取り付け、チューブに差し込みます。ある程度ネジを回したらハンマーで打ち付け、そこからスパナやレンチを使って固定しましょう。熱交換器と隙間が少ないので手を打ち付けないように気を付けて作業します。

ここまで来るとあとは引き抜くだけです。ノックピンで何度か作業すると簡単に引き抜くことができます。

1本単位でチューブを補修

メンテナンス作業において、1本単位でチューブを補修する特殊工具を紹介します。

【KRAIS】ACTP全自動式連続チューブプーラー

ACTP全自動連続チューブプーラーは、12トンもの引き抜き能力を持つシリンダーを備えています。手作業だと時間のかかる工数を、本体を上から吊り下げて重心を安定させた状態で、シリンダーを使って短時間でチューブ内を補修することが可能です。

シリンダーによって規則的な運動を繰り返すことで、均一の仕上がり具合を実現できるため、チューブ内の補修にも効果が見込めます。

チューブ内の補修が終われば、次のチューブにドリルで軸を差し込み本体を設置するので、効率的なメンテナンスが可能です。

【KRAIS】エアーフィンのプラグ補修されたチューブを修復

次はネジ山が傷んだエアーフィンのチューブ穴を専用工具で修復する作業です。溶接されたリードを除去するので、ロッキングプレートを固定したままリムーバルヘッドを接続します。

きれいに除去されたのを確認し、六角ナットをプラグに溶接してから外しましょう。インチアップするためにドリルで穴を空けてからヘッドを交換して新しいネジ山を作成していきます。

このとき、センター穴の芯を維持するために、マシンをそのまま使用しましょう。ラチェットタイプのタップを取り付けてネジ山の修正が完了です。一度取り外すとセンターがズレてしまう可能性があるので、手作業になりますが、ラチェットタイプのタップを使用するほうが確実でしょう。

最後にガスケット面を作り、ガスケットシートとプラグをセットして完成です。

【KRAIS】MiniCut100を使ってチューブの内側から切断

熱交換器のチューブを切断したい場合、外側からではなく内側から切断する必要があります。MiniCut100を使用すると安全かつ迅速な切断作業が可能です。

また、MiniCut100の自動送り装置付きで、専用治具を使って炭素鋼のチューブの内径を切断することもできます。

1分間に100回転をしながら、145NM(ナノメートル)の力で素早く切断可能です。チューブ内を固定しながら、1本ずつ早く作業できるので、作業者の負担も軽減され、全体的なメンテナンスの作業効率も改善できるでしょう。

まとめ

ここまで熱交換器のメンテナンス作業について解説してきました。

チューブ内の汚れや摩耗、腐食といった劣化を放置することは、設備の全体的な熱の伝達効率を悪化させることにつながります。

リークテストやリチュービングといった定期的なメンテナンス作業を実施することで、効率のよい生産体制を構築できるでしょう。

熱交換器のメンテナンスは専用の知識や工具が必要ですので、ぜひとも最新工具の揃っている専門業者に依頼するようにしてください。

協和機工株式会社では、KRAIS社をはじめ、海外の最新特殊工具を使用した熱交換器メンテナンスサービスが強みです。安全・効率・コスト削減と三拍子そろった熱交換器メンテナンスをぜひ体感してください。詳しくは「協和機工の熱交換器メンテナンスサービスページ」をご覧ください。

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