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据置鉛蓄電池の寿命はどれくらい?仕組みから寿命を延ばすポイントまで解説!

2024.10.11

据置鉛蓄電池の寿命はどれくらい?

 

車のバッテリーなどで使われる鉛蓄電池は有名ですが、据置鉛蓄電池は産業用の非常用電源や太陽光発電と組み合わせて使用される鉛蓄電池等を指します。

この記事では、この据置鉛蓄電池の仕組みや寿命を延ばすためのポイントについて解説します。

据置鉛蓄電池の寿命はどれくらい?

鉛蓄電池の寿命にはいくつか基準があります。電池容量が一定の値以下に到達するまでの期間や充放電回数による基準、税務上の基準などが挙げられます。

ここでは、一般的な寿命と法定耐用年数、そして寿命に与える要因について解説します。

一般的な鉛蓄電池の寿命

蓄電池の寿命は種類や放電方法により異なります。業界大手メーカーの古河電池の機器を例にすると、ベント式(触媒栓式)が制御弁式より、低率放電用が高率放電用より長寿命の傾向があります。

高率放電は5〜7年、低率放電は7〜14年程度とされますが、これは目安であり、充放電回数や使用環境によって大きく変動します。

寿命は製品の特性や使用条件、メンテナンス状況に応じて個別に評価する必要があります。

参考:据置鉛蓄電池の保守点検方法は?交換時期はいつ? |古河電池株式会社

蓄電池の法定耐用年数

法定耐用年数は、税務上の減価償却費計算のために財務省令で定められた期間で、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で確認できます。

この省令の「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」によると、蓄電池の法定耐用年数は6年とされています。

ただし、これは減価償却計算用の数値であり、実際の寿命とは異なる場合があるため、注意が必要です。

充放電サイクルの影響

蓄電池が満充電から完全放電、再度満充電するまでの流れを「1サイクル」と言います。この充放電サイクルは増えるほど劣化が進み、寿命に影響します。

また、放電深度も寿命に大きく関わり、浅い放電を繰り返す方が寿命を延ばせるとされていることから、蓄電池の寿命は使用方法に大きく左右されます。

充放電が適切であるかのチェックと放電深度を制御することにより、蓄電池の寿命を最大限に延ばすことが可能です。

使用温度による影響

鉛蓄電池の寿命は使用温度に大きく影響されます。特に高温環境下では以下の問題が生じ、寿命が縮まる可能性があります。

  • 過充電:周囲温度上昇により充電電力が増大
  • 格子腐食の促進:高温による化学反応の加速
  • 減液:電解液中の水の電気分解が促進され、電池内部で吸収しきれないガスが放出

これらの要因により、高温環境下では鉛蓄電池の劣化が加速するため、適切な温度管理は蓄電池の寿命を延ばす上で非常に重要です。ぜひ使用される際には、適温での使用を心がけましょう。

鉛蓄電池の特徴とメリット

鉛蓄電池は150年以上の歴史を持ち、現在も改良され広く使用されています。そんな鉛蓄電池の特徴とメリットについて解説します。

端子あたりの電圧が高い

鉛蓄電池の特徴の一つは、1セルあたりの公称電圧が2Vと高いことです。これは、ニッケル・水素蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池(共に1.2V)より高く、リチウムイオン電池(3.6V)に次ぐ高さです。

この高い端子電圧には以下のメリットがあります。

  • 少ないセル数で所望の電圧が得られる
  • 高電圧が必要な用途に適している

こうした点から、鉛蓄電池は様々な分野で広く使用されています。

導入コストが比較的安い

鉛蓄電池は、他の蓄電池と比較して導入コストが安価である傾向があります。鉛蓄電池が安価な理由は以下の3つとされています。

長い歴史と確立された技術

鉛蓄電池は150年以上の歴史を持ち、製造技術が十分に確立されています。

原材料の安定供給

主要材料である鉛と硫酸が安定的に存在し、供給が確保されています。

効率的な製造プロセス

長年の改良により、製造プロセスが最適化され、効率的な生産が可能です。

リサイクル体制が整っている

鉛蓄電池のメリットの一つに優れたリサイクル性が挙げられます。材料のほとんどがリサイクル可能で、リサイクル率は95%以上に達しています。

使用済み鉛蓄電池から鉛を回収し、新しい電池や他の製品に再利用するプロセスが確立されています。

この高度なリサイクル体制には以下のメリットがあります。

  • 鉛の新規採掘削減
  • 鉛生産に伴う環境負荷の軽減
  • 資源の有効活用

これらの環境面でのメリットが、鉛蓄電池が現在も多くの用途で広く利用されている理由の一つとなっています。

鉛蓄電池のデメリット

これまで鉛蓄電池の寿命や性能、コストなどのメリットについてご紹介しましたが、デメリットもあります。

ここでは、鉛蓄電池のデメリットを解説します。

重量や体積が大きい

鉛蓄電池は大きな起電力を持ち、自動車や電動フォークリフトなど大電力が必要な用途に適しています。しかし、電極に鉛を使用し、電極面積が大きいため、重量や体積が大きくなる傾向があります。

エネルギー密度(単位質量あたりの蓄電可能電力量)は、リチウムイオン電池、NAS電池、ニッケル水素電池など他の蓄電池と比較して劣っています。そのため、小型化や軽量化が求められる用途にはあまり適していません。

参考:蓄電池の種類と特徴|蓄電池バンク

電解液に希硫酸を使用するため注意が必要

鉛蓄電池の電解液には希硫酸(硫酸を水で希釈したもの)が使用されており、取り扱いには十分な注意が必要です。

もし、鉛蓄電池が破損した時には以下のようなリスクがあります。

  • 皮膚接触:化学熱傷を引き起こす可能性
  • 眼への接触:失明の危険性

鉛蓄電池は電解液の流出を防ぐ構造になっていますが、安全性を確保するためにも、適切な保護具の着用や破損や漏れがないかを定期的にメンテナンスするように心掛けましょう。

サルフェーションが発生する可能性がある

サルフェーションとは電極板に硫酸鉛が蓄積し、結晶化してしまう現象のことをいいます。

硫酸鉛は放電時に生成、充電時に分解されるものですが、長時間放置されたり、充放電を繰り返すことで、分解されにくくなります。

サルフェーションが発生した鉛蓄電池は、電池容量が減少し、元の容量を維持することができなくなります。

サルフェーションを防ぐには、適切な充放電管理と定期的なメンテナンスが重要です。これにより、鉛蓄電池の寿命と性能を最大限に保つことができます。

鉛蓄電池の寿命を延ばすポイント

鉛蓄電池は設置環境や運用方法により寿命が大きく変わります。

ここでは、具体的にどのような設置環境や運用方法が良いかを解説します。

高温・低温環境下での使用を避ける

鉛蓄電池の寿命は温度に大きく影響されます。充電時の化学反応や放電時のジュール損により電池温度が上昇するため、周囲温度の管理が重要です。

特に高温環境では劣化が加速し、10℃の温度上昇で寿命が約半分になると言われています。

逆に低温環境下では性能が低下(UPSなどではバックアップ時間が短くなるなど)します。そのため、適切な温度管理を実施することが大切です。鉛蓄電池にとって、理想的な動作温度範囲は20〜25℃程度とされています。

過充電や過放電を避ける

過充電や過放電も鉛蓄電池の寿命に影響を与えます。過充電は電池内部の温度上昇や水の電気分解を促進し、電解液の減少を引き起こします。

一方、過放電はサルフェーション現象を発生させ、蓄電池の容量を低下させます。充放電の範囲を電池容量の20~80%程度に保ち、使用後は過放電を避けるために速やかに充電することで、寿命を延ばすことができます。

1日2サイクルの充放電回数を避ける

鉛蓄電池の寿命を延ばすポイントには、充放電回数の管理も挙げられます。

サイクル数が増えるほど蓄電容量が減少し、頻繁な充放電は内部の化学反応を促進させ、温度上昇による劣化を引き起こします。

長寿命化のためには、1日1サイクルの使用に抑えることが効果的です。これにより、電池内部の負荷を低減でき、劣化速度を抑えられます。過度な使用を控えることが蓄電池の寿命延長につながります。

鉛蓄電池に関するよくある質問

最後に蓄電池でよく耳にする寿命に関する質問を紹介します。導入されている方もこれから導入を検討される方もぜひ参考にしてください。

鉛蓄電池が寿命を過ぎたらどうなる?

蓄電池の寿命は、通常、蓄電容量が定格容量の80%まで低下した時点と一般的に定義されます。

しかし、この時点ですぐに使用不能になるわけではありません。寿命を超えた蓄電池は、充電時間に対する使用可能時間の短縮や、フル充電後の急速な電池残量の減少などの症状が現れますが、使用自体はできます。

ただし、寿命を大幅に超えて使用すると、これらの症状に加えて、電解液の変色や漏れ、端子部の異常、焼損などの危険が生じる可能性があります。安全性を考慮し、定期的な交換をおすすめします。

鉛蓄電池の寿命をどう判断する?

鉛蓄電池の寿命判断にはいくつか方法があります。

  • 容量確認:寿命になった場合、定格容量の80%程度まで低下するため、満充電時の使用時間などで判断
  • 劣化診断:専門業者にて容量試験器にて判断(診断費用が必要)
  • 性能点検:充放電の効率や内部抵抗測定などで定格値と比較して判断
  • 外観点検:蓄電池やふたのふくれ、異常な温度上昇の有無などで判断

一つの項目のみで、寿命と決定せず、いくつかの方法を組み合わせて総合的に寿命を判断することで、正確な評価ができます。

まとめ

据置蓄電池の一般的な寿命と寿命を延ばすポイントについて解説しました。

設置環境や使用頻度、過度な充放電は避けることで、寿命を延ばすことができます。

蓄電池は寿命を過ぎても、ある程度使用し続けることは可能ですが、定期的に機能劣化を確認して、機器更新を検討することが大切です。

 

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